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朝顔 [社会]

もう20年ほど前の話、
会社を創って決算が必要で、税理士さんにお願いするお金の余裕がなく、
一度融資を受けた銀行の担当者に相談をした。
事情を理解していただき、ボランティアで作成してくれ、
本当に助かったものです。

3年目にご本人が「定年退職で、今年が最後なのと、もうパソコン入力の
時代で、自分は不得意」とおっしゃった。数字や文字が本当にうまくて、こんなに
文字がきれいな人がいるんだといつも驚いていた。

最後にお食事でもとお声がけをして銀行の近くの店に行くことになった。

結構お酒が進み、「銀行の人はみんな知っているけれど、他の人には話したことが無いことがあって・・・」

私も好奇心がまさり「差し支えなければぜひ」

その方はぼそぼそと、
「自分もそれなりにエリートコースにのっていた、それが40歳の時、大事な取引先の会社の経理担当の女性に一目ぼれをしてしまった。相手は独身で自分はもう結婚をしていた。
家内がどうのこうのでは全くなく、本当に好きになってしまった。

そのうち、職場でも知られることになり、上司から「このままだと立場が危なくなるよ」と何度も忠告を受けた。妻もいるし、もうその女性と別れるしかないと覚悟を決めて、最後の食事をした。お互いに、目に涙を浮かべて、それでも自分の立場を理解してくれた。

その夜、女性のお兄さんから電話が入った、「妹が事故で亡くなった、無理だとは思うがせめて葬式に参列をしてもらえないか。」

葬式の当日、双方の職場関係の人が驚きの光景を見ることになった。

自分が喪主になり女性の写真を抱えていたから。

ざわざわとどよめきが広がった。もうこれで自分も社会的に終わりになるが、最後にその女性に
できることはそれだけだった。


結局、ずっとすべてを知っていた奥様もことを荒立てることもなく、出世はなくなったが、銀行は継続することができたそうだ。

ごく普通に見える人がこれほどのドラマを持っている。

季節ごとに咲く花々は、こういう人たちの思いを受けているのだろうと、
思う。

先日、入谷の朝顔市に出かけ、ふっとこの話を思い出した。

決算は税理士さんに頼むようになりその後お会いすることは全くないが、
年賀状は行き来しており、
お幸せにと心から願っている。そして実はこういう話を私はもう一人から聞いたことがある。


入谷の朝顔市

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